私が採用担当者だったとき、中途採用者を1名採用する場合は書類選考で3人程度まで絞り込みました。
そして、3人まとめてのグループ面接か個別の面接を行い、最終合格者を決定します。
今回は、私が実際に採用担当の立場であったときに経験した3名の面接エピソードを例に挙げて、合格者と不合格者との違い、対処方法についてご紹介していきたいと思います。
容姿端麗で能力があったにも関わらず不合格となったAさんの場合
Aさんは、応募条件であった大学卒で履歴書の写真通り容姿端麗な女性でした。
配属予定先は男性社員が多い営業部であったため、容姿端麗で事務能力に優れたAさんはピッタリ合っている印象でした。
面接での受け答えも模範解答のように的確で、会社の上層部の評価はどれも高いものばかりでした。
しかも、Aさんの特技は書道であったため、履歴書に書かれた文字は手書きとは思えないほど美しいものでした。
営業部に配属されると、急な訃報を受けと時に香典袋に会社名を書いたりする業務もあるのです。
「美しい字が書ける」という特技は、とても好印象でした。
面接が終わり、採用担当者の女性がエレベーターまで案内した時でした。
Aさんは突然、
「なぜ中途採用の募集をだしたのか」
と採用担当の女性に質問しました。
採用担当の女性は、
「社内結婚で退職される方の後任の募集です」
と答えました。
するとAさんは、
「社内結婚だと女性が辞めなきゃいけないのですか」
と語気を強めて聞き返してきたのです。
採用担当の女性は、
「ご本人が結婚したら退職したいと思ったようです」
とだけ答えました。
Aさんを送り、オフィスに戻った採用担当者の様子に違和感を感じた人事担当者が、Aさんと何を話したのかを聞き出しました。
Aさんは、面接の評価はとても高かったのですが不合格となりました。
なぜならば、面接を受けに来たAさんをじっと見ていた女性社員たちの評判がとても悪かったのです。
Aさんは、面接を行う会議室の中では笑顔で優雅な立ち振る舞いをしていました。
しかし、採用担当者の目が届かないところでは、ツンとした態度で女性社員たちに接していたのです。
採用担当者は、転職者の個人的な能力や性格も合否の判断基準にしますが、実は、
「もしもこの人を採用したしたら、職場はどういう雰囲気になるかな」
とイメージして採用に踏み切るのです。
多少スキルが足りなかったとしても、現在の職場に雰囲気が合っていると判断すれば採用になることも十分にありえるのです。
一方、Aさんのようにスキルは十分すぎるほどあったとしても、採用後の人間関係に心配が残る場合は不採用になることもあるのです。
面接は、面接会場だけで行われているわけではありません。
会社の中にいるすべての人が採用担当者だと思うことが大切です。
自分のミスを認めなかったBさんの場合
Bさんは、面接予定時刻のピッタリ1時間後に来社しました。
1時間も遅れてきたにもかかわらず、一切謝罪もせず自分が遅刻してきたことに気が付いていない様子でした。
採用担当者から、
「お伝えした面接時間と違うと思うのですが」
と伝えると、Bさんは、
「この時間でお聞きしました」
とキッパリと切り捨てました。
面接では一般的な質問をしましたが、どの質問に対しても自分の考えを強めに答える傾向がありました。
よく言えば、とてもハキハキとした印象でしたが、悪く言えば我が強い印象でした。
面接予定時刻に遅れてきたことに気が付いていないということは、電話で面接時間を伝えた時にすでに間違えて受け取っていたと思われます。
電話でのやり取りの時、面接日時など間違えてはいけない事柄については聞き取った内容を、
「繰り返します」
と言って確認することが大切です。
Bさんの場合は、大幅に遅刻をしてきた段階でほぼ不合格となっていました。
しかし、もしもBさんが素直に間違えたことを謝罪していたら、状況は変わっていたのかもしれません。
口下手だったCさんの場合
Cさんが面接に来社した時、履歴書に貼られた写真とイメージが違ったため、みんなで驚きました。
履歴書の写真は、暗いイメージだったのですが、実際のCさんは写真よりもずっときれいな女性でした。
書類選考は、書かれている内容が一番大切ですが、写真も人物のイメージをつかむ重要な資料になります。
できるだけ履歴書に貼る写真は、明るい印象を与えるものを選びましょう。
Cさんは、口下手なようで聞かれたことには答えるけれど、余計なことはしゃべらないタイプでした。
しかし、にこやかな笑顔がさわやかで、とても聞き上手な印象でした。
面接が終わっても、採用担当者たちに、
「もう少し話がしたかったな」
と思わせる余韻を残していました。
Cさんは、パソコンスキルが若干足りなかったのですが、
「これからもパソコンの勉強を続ける」
と自己PRの中で言っていたため、採用となりました。
Cさんが採用された最大の理由は、人の好き嫌いがなく、分け隔てなく付き合える雰囲気があったことでした。
採用後もCさんは、良好な人間関係を築いていました。
まとめ
採用面接で一番の決め手になることは、スキルよりも「人柄」です。
人柄は、演じて作り出せるものではありません。
毎日の生活を充実させることで、自然と体からにじみ出てくるものです。
転職活動中は、忙しい毎日でギスギスしてしまいがちですが、時にはゆっくりと自分らしさを取り戻す時間も必要なのかもしれません。